岩手県大船渡市三陸町の海沿いの高台に吉浜字扇洞(おうぎほら)という集落がある。人口1000人余り。ここは東北3県の海岸にあって、今回の震災で犠牲者、家屋被害ともほとんどなかった珍しい地域だ。 集落の中心にある正寿院(写真)という曹洞宗のお寺に、この奇跡の由来を物語る石碑が建っている。建立は1900年(明治33年)4月。歳月を経て碑面はかすれているが、「嗚呼、惨哉、海嘯」と読める文字の下に210人の名前が彫り込まれている。1896年に、この集落の前身「吉浜村」を襲った明治三陸大津波の犠牲者だ。旧制盛岡中学の学生だった石川啄木が修学旅行でここを訪れ石碑を見て泣いた、と同行の友人の日記にあるそうだ。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン