あのピカソが衣装、舞台美術を手がけたバレエが、オリジナル通りにパリで再演されたのを見る機会があった。演目はエリック・サティ作曲、ジャン・コクトー台本の「パラード」。見世物小屋でサーカスの馬や手品師などが次々と芸を披露するという、たわいのない内容だが、ピカソの色彩と造形が「飛び出す絵本」のように際立っていた。初演当時は第一次大戦中だったために「非国民的だ」と大スキャンダルになった作品だ。舞台とは何の縁もなく、アトリエの中でひとり孤独に制作に打ち込む画家を、「舞台」という集団生活に無理やり引っ張りこんだのはコクトーだった。

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