すでに国家再建への道筋はみえている。人質事件も米軍との戦闘も、すべて各勢力が自らの地歩を最大化する動きに過ぎない。 五人の無事解放という形で終わったイラクでの日本人人質事件は、一当事者として日本国民がイラク情勢を真剣に見つめる機会を与えた。しかし十日間の人質救出劇の間になされた報道や論評によって、日本のイラク情勢認識はどれほど深まったのだろうか。イラク政治の基本的な動きを規定する政治文化的なパターンや、現在の状況を規定している枠組みと政治日程、その中での対立軸と争点はどれだけ理解されたろうか。それらを踏まえた上で人質事件がどのような意味をもつかをとらえ、適切な対処を検討していく姿勢が必要だったはずだ。
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