なぜ日本はTPPに参加すべきなのか

執筆者:山下一仁 2011年10月24日
エリア: アジア

 TPP(環太平洋経済連携協定)は、①我が国が結んだ経済連携協定が農産物について多数の例外品目を設けているのに対し、ほぼ全品目の関税を撤廃する、②物の貿易のみならず、サービス貿易、政府調達、競争政策、投資など様々な分野を包摂する、③将来アジア太平洋地域全域をカバーすることが期待されている、という特徴がある。TPP反対論が喧伝されているが、TPPは我が国にどのような意義をもつものだろうか。まず、参加するメリットを挙げよう。

成長戦略としての重要性

 1990年以降の成長率が続くとすれば、日本は2020年までに一人当たりの国内総生産(GDP)で韓国や台湾に抜かれてしまう。しかし、企業が貿易・投資により国際化すれば、国外の技術や活力を取り込み、経済成長に必要なイノベーションを活性化させることができる。企業の生産性は、輸出を行なうことによって2%、対外直接投資を行なうことで2%、海外で研究開発を行なうことで3%、上昇するという分析がある。
 TPPには、アメリカ、豪州、シンガポールなどのアジア太平洋地域の先進国が参加しているうえ、関税の撤廃だけではなく、貿易を円滑に進める方法、投資の保護や促進などについても対象としている。我が国がTPPに加わることは、海外先進国の技術を吸収して経済成長するために、効果的だ。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
山下一仁(やましたかずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1955年岡山県生れ。77年東京大学法学部卒業、同年農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年から現職。近著に『日本が飢える!』(幻冬舎新書)、『国民のための「食と農」の授業』(日本経済新聞出版)、『いま蘇る柳田國男の農政改革』(新潮選書)
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