「ウラン濃縮成功」で飛躍的に高まった「北の核」の脅威

執筆者:平井久志 2010年12月17日
エリア: アジア
米シンクタンク・科学国際安全保障研究所(ISIS)が公表した北朝鮮・寧辺のウラン濃縮施設と見られる青い屋根の建物 (C)時事[ISIS提供]
米シンクタンク・科学国際安全保障研究所(ISIS)が公表した北朝鮮・寧辺のウラン濃縮施設と見られる青い屋根の建物 (C)時事[ISIS提供]

 北朝鮮が11月23日に延坪島を砲撃し朝鮮半島情勢が一気に緊張したため、北朝鮮のウラン濃縮という極めて深刻な問題がかき消されてしまった感がある。だが、この問題は極めて重大である。  北朝鮮は9月28日に党代表者会を開いて金正恩(キム・ジョンウン)後継に向けた新体制を作り、10月25日の中国人民志願軍参戦60周年関連行事などで中国の支持、支援を確保すると「核」を使った瀬戸際外交に出てきた。  11月に入るとプリチャード元朝鮮半島和平担当特使(2日から6日)、スタンフォード大学のジョン・ルイス名誉教授やヘッカー同大学国際安保協力センター所長(元ロスアラモス国立研究所長)一行(9日から13日)、さらにモートン・アブラモウィッツ元国務次官補らの研究者グループ(15日から18日)と、北朝鮮は米国の外交や安保分野の専門家たちを次々に招待した。アブラモウィッツ元国務次官補らのグループには安全保障問題の専門家、リオン・シーガル氏や、トニー南宮(ナムグン)ニューメキシコ州知事補佐官などが含まれていた。  いずれも、北朝鮮とのパイプを持つ米国の専門家であり、北朝鮮の意向を非公式に米国政府へ伝達するメッセンジャーの役割を果たす人物だ。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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