リビア空爆とオバマ政権の揺らぎ

 3月17日、国連安全保障理事会は、リビア上空に飛行禁止区域を設定する追加制裁決議を採択した。常任理事国のロシアと中国は軍事行動に反対していたが拒否権を行使せずに棄権した。19日には米国、英国、フランスなどの多国籍軍が、カダフィー政権軍の部隊と施設に、戦闘機と巡航ミサイルによる空爆を行なった。この空爆の軍事的な目的は、反政府軍に空爆を加えているカダフィー政権軍の航空能力を奪うことで、飛行禁止区域を設定することであった。

 戦術的な軍事的目的は容易に理解できるとして、問題は多国籍軍の戦略的な目標である。カダフィー政権の反政府勢力への軍事行動をけん制するといっても、事態の展開次第では陸上兵力を送り、リビアの内戦に介入するという最悪の状況にまでエスカレートするリスクが存在する。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席研究員。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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