エネルギー業界のリーダーに脱皮できるか「3男坊」中部電力の瀬戸際

執筆者:安西巧 2013年9月5日
タグ: 中国 日本 原発
エリア: アジア
 経営者としての器量が問われている水野明久社長 (C)時事
経営者としての器量が問われている水野明久社長 (C)時事

 政府による電力システム改革が遅々として進まない中、既存制度の根幹である電力業界の地域独占体制が崩れ始めた。先兵役となったのは東京電力、関西電力に次ぐ業界の「3 男坊」といわれてきた中部電力。8月7日に三菱商事子会社の「新電力」(特定規模電気事業者=PPS)である『ダイヤモンドパワー』(東京都中央区)の買収を発表、福島第1原子力発電所の事故以来瀕死の状況にある東電の牙城、首都圏に攻め入ることになった。

 ところが、 不可避の自由化を先取りした戦略ながら、そこは官僚主義のはびこった電力会社のこと。業界秩序を気遣って経営トップの歯切れは悪く、打つ手も小出しに見える。浜岡原発の再稼働断念、大阪ガスなどエネルギー大手との経営統合――。一見常識破りのこうした施策さえ、現実味を帯びている業界の現状からすれば、昨今の中部電力の動きはむしろ鈍いともいえる。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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