タイの「憲法裁判所」は誰を守っているのか?

執筆者:樋泉克夫 2014年3月31日
タグ: タイ
エリア: アジア

 不完全な総選挙から1カ月半ほどが過ぎた3月18日、反政府運動が沈静化したことを理由に、インラック政権はバンコク首都圏を対象として発令されていた非常事態宣言を解除した。だが21日、憲法裁判所が憲法第108条の「選挙日は王国全域において同一日としなければならない」との規定に違反していることを理由に、2月2日の総選挙(下院、定数500)は無効との判断を下したことから、再び緊張が高まりつつある。

 2月2日の総選挙は、最大野党である民主党がボイコットしたことで、同党最大の支持基盤である南部の28の選挙区で候補者ゼロとなり、加えて投票日当日には反タクシン派の妨害により、バンコクの一部などで投票中止となった。総選挙を巡っては、2月12日、民主党が選挙無効を求めて訴えたが、憲法裁判所は却下している。だが、その後、有識者の訴えを受けた国家オンブズマンが3月6日に提訴していた。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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