2015年の米中関係(下)「軸足移動」と日本の役割

執筆者:武内宏樹 2015年2月23日
エリア: 北米 アジア

 前回(2月11日付「2015年の米中関係(上)日本流の『関与政策』とは」http://www.fsight.jp/32781)に引き続き、昨年11月にサザンメソジスト大学タワーセンター政治学研究所で行われたシンポジウムに基づいて、2015年の米中関係を論じてみたい。前回は米国が中国に対して長年採ってきた「関与」(engagement)政策について論じたが、今回は近年注目を集めている「軸足移動」(pivot)について論じてみたい。

 米国でこの問題を論じる際には、「軸足移動」と「政策調整」(rebalancing)が同じ意味を持つ用語として使われるが、筆者はここでは「軸足移動」で統一したい。というのは、昨年11月25日付の論考(「米国にとっての『ウクライナ問題』(上)『大戦後最も深刻な国境線変更』http://www.fsight.jp/30736)でも述べたが、「軸足移動」というのは米国安全保障政策上、どの地域を重視するかという「優先順位」(priority)をめぐる問題と同一視されるのに対して、「政策調整」の意味で「リバランス」というと「台頭する中国に対抗して勢力均衡を図る」という印象を与えてしまうと考えるからだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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