2022年冬季五輪「北京」決定で緊迫化する「日中韓」関係

執筆者:樋泉克夫 2015年8月12日
エリア: アジア

 7月31日、クアラルンプールで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会は、2022年冬季オリンピックの北京開催を決定した。2008年に夏季大会を実施している北京は、史上初の夏季と冬季の両大会開催都市ということになる。これも習近平政権が掲げる「中国の夢」に向けての一環ということか。

 

「習近平の、習近平による、習近平のための」

 北京における近未来の政治日程に照らしてみると、2022年は習近平政権最後の1年となる。無論、その時まで共産党政権が続くなら、だが。しかし、それまでに独裁体制が崩壊して民主的政権が北京に誕生するとは思えそうにないから、74年間の治政の末に瓦解したソ連共産党を抜き去り、中国共産党は世界の共産党政権としては最長不倒の“空前の記録”を達成することになる。ならば習近平は毛沢東、鄧小平に次ぐ“偉大な指導者”として中国はもとより、世界の共産党政権の歴史に輝かしい1頁を留めることになる。だから2022年冬季大会は、習近平の、習近平による、習近平のためのオリンピックになる可能性は大きい。1936年のベルリン・オリンピックが、ヒットラーのためのそれであったように。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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