香港デモを「破れかぶれ」にする絶望的「社会矛盾」

香港紙に掲載された「Mr. Hong Kong」の意見広告(筆者提供、以下同)

 

 9月13日、香港特別行政区政府は『日本経済新聞』に1頁大の意見広告を掲載した。下から5分の1ほどのスペースに、九龍と香港島に挟まれたビクトリア港、ビクトリアピークを背に立ち並ぶ超高層ビル群、白い雲を浮かべた青空――世界の金融センターとしての香港を象徴するような風景であり、どこまでも続く青空を模した色調の紙面は、明るい香港をイメージさせるに十分だ。

こちらは香港特別行政区政府の意見広告

 青空を背景にした最上部に大きく「香港」の2文字が配され、香港は「平和的、理性的かつ合理的なやり方」で問題解決に努める、と宣言している。要するに「自由で開かれた社会」である香港は「一国二制度」と「法の支配」を堅持し、「問題解決のための前提条件なしの対話」を進め、「回復力と知恵」を持つ「ダイナミックな経済体」である、と言う。最後は「香港は今回もきっと立ち直ります。それが香港という街なのです」とゴチックで強調され結ばれている。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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