
[ワシントン発(ロイター)]睡眠の生物学的目的は多くの謎に包まれているが、人間を含むあらゆる動物にとって必要不可欠であることは確かだ。人間の場合、生きている時間の約3分の1も睡眠に割いている。
一方で、極端に睡眠を削りながら生きる動物もいる。その一例が、ずんぐりとした大きな体つきのキタゾウアザラシだ。学術誌「サイエンス」に4月20日、キタゾウアザラシの驚きの睡眠習慣に関する研究論文が発表された。キタゾウアザラシは1年のうち 7カ月間、餌を求めて太平洋を旅するが、その間は1日にたった2時間しか睡眠をとらないことが明らかになった。捕食者を避けるために、深い場所まで潜った時に約10分の仮眠を取り、合計すると1日2時間になる。ここまで睡眠時間が短い哺乳類は、他に知られている限りではアフリカゾウだけだ。
キタゾウアザラシが広い海を旅している間の睡眠時間は、繁殖期の間の様子とは大きく異なる。繁殖期の間は、カリフォルニア州アニョ・ヌエボの砂浜などで毎日10時間ほど寝て過ごす。
研究チームは睡眠に関する脳の信号や心拍数、位置、深度などの情報を測るため、キタゾウアザラシの頭にセンサーの付いた非侵襲の防水合成ゴム帽子を被せた。なお、長期にわたり海を旅するのはメスの方であり、オスは沿岸近くで餌を探すため、研究はメスに着目して行われた。
その結果、型破りな睡眠行動が記録された。
キタゾウアザラシは30分ほどの潜水をする際、一定の軌道を保って下降しながら「徐波睡眠」と呼ばれる深い睡眠の段階に入っていった。続いて、睡眠麻痺を引き起こす段階の「レム睡眠」に移行すると、コルクスクリューのように螺旋を描きながら寝落ちする……

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