
[ワシントン発(ロイター)]未確認飛行物体(UFO)、もしくは米政府が現時点で「未確認異常現象(UAP)」と名づけているものを研究する米航空宇宙局(NASA)の独立研究会が5月31日、初めて公開会議を開いた。メンバーたちは、質の高いデータが乏しいことと根深い偏見が、この謎を解明するうえで最大の障壁になっていると述べた。
この研究会は昨年6月に物理学から宇宙生物学までの科学分野の第一人者16名で結成された。今回の会議では、7月下旬に予定されている報告書の発表に先立ち、予備調査の結果を4時間にわたって審議、その模様をNASAのウェブキャストでライブ配信した。
議長を務める天体物理学者のデイヴィッド・スパーゲル氏は、研究会の役割は「これらの事象の本質を解明すること」よりもむしろ、将来の研究の指針となる「ロードマップ」をNASAに提供することだと語った。NASA関係者によれば、研究会が発足して以来、数名のメンバーが不特定多数の者から「オンライン・ハラスメント」を受けたという。
NASA科学ミッション総局の責任者であるニコラ・フォックス博士は冒頭の挨拶でこう述べた。
「このテーマを研究しているせいでメンバーがオンラインで嫌がらせに遭ったことを耳にし、本当にがっかりしています。ハラスメントは偏見を助長することにしかなりません」
とはいえ、メンバーたちが挙げた最大の課題は、UFOの存在を文書で証明するのに当たって、科学的に信頼できる方法が乏しいことだ。既知のテクノロジーや自然の法則の限界を超越して移動する物体らしきものの目撃例がその典型である。
彼らによれば、根本的な問題は、くだんの現象がカメラやセンサーなどに発見・記録されていたとしても、そうした機器が概して特殊性を正確に観測するべく設計・調整されたものでないことにある。
「私たちが学んだと感じていることを簡潔に表わすなら、質の高いデータが必要だということです」とスパーゲル氏は語る。「あらゆるUAP事例の性質と起源について言えることですが、現存するデータと目撃談だけでは決定的な証拠を提供するのに不十分です」
この話題につきまとうタブーも相変わらず厄介だ。
近年、米国防総省は軍のパイロットにUAPの事例を文書として提出することを奨励しているが、民間のパイロットの多くがこうした目撃談ゆえに色眼鏡で見られることを恐れ、「報告することに腰が引けている」とスパーゲル氏は語る。……

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