[フランス総選挙]統治経験なき右翼、核保有国フランスを治める不安――国際問題専門誌『グラン・コンティナン』代表ジル・グレサニ氏

執筆者:国末憲人 2024年7月6日
タグ: フランス
エリア: ヨーロッパ
[2024年7月4日、フランス・パリ](C)EPA=時事
明日7日に決選投票を迎えるフランス総選挙は、左派連合「新人民戦線」(NFP)と与党連合が候補者1本化を進めたことで、初回得票率首位の「国民連合」(RN)は勢いを削がれるとの見方が浮上した。ただし、国民連合が解散前から議席を大きく伸ばすことは確実視され、投票率低下のシナリオでは優位がさらに顕著になるとも考えられる。国民連合を率いるマリーヌ・ルペンは、同じく極右から出発しながらエリート層とも巧みに連携するイタリア首相のジョルジャ・メローニとは同一視できないと、国際問題専門誌『グラン・コンティナン』代表の政治研究者グレサニ氏は指摘する。コア支持層のプロファイル、ロシアとの関係、欧州大陸内で唯一核戦力を持つ国の政権にその影響力が増すことの意味について聞いた。(聞き手=国末憲人)

――今回の総選挙で、右翼「国民連合」がなぜ、これほど伸張ぶりを示しているのでしょうか。

ジル・グレサニ(Gilles Gressani)氏
イタリア出身、フランス高等師範学校在学中にシンクタンク「地政学研究グループ」を設立し、国際問題専門誌『グラン・コンティナン』代表を務める。32歳。[写真:国末氏撮影]

 理由はある意味、単純です。今回の総選挙は欧州議会選挙の直後、(大統領エマニュエル・マクロンによる)一方的な解散によって始まりました。選挙期間が極めて短かったため、国民連合が大統領与党に圧勝した欧州議会選の流れ1がそのまま引き継がれたのです。その結果、欧州議会選と同様に、パリを除く国内ほとんどの地域で国民連合がトップとなりました。今や、国民連合が国民議会(下院)で第一党となるのは間違いありません。残された問いは、過半数を得るかどうかです。

 現在のフランスの支持層は、右翼と中道マクロン派と左派左翼でほぼ3等分されますが、右翼は30%よりやや多く、中道はやや少ない。中道と左派左翼が連携すると右翼に勝ち目はないのですが、有権者の反応を見ると、連携はうまくいきそうにありません。世論調査では中道支持層の50%あまりが決選で左派左翼に投票するつもりがない。左派左翼支持層の約50%もマクロン派の候補には投票しない。両者が一緒にやるのは、やはり不自然なのです。

 ただ、では国民連合に果たして、内閣が務まるか。国民連合の政治家に、閣僚経験がある人物はほとんどいません。真のエリートでこの政党にかかわる人物もこれまでいませんでした。

「ルペン」の名を消す「ジョルダン・バルデラ」という人物

――これまでの連立内閣でも、国民連合は対象外とされてきたのですね。

 その理由は、フランス第5共和制の創始者シャルル・ドゴールが、(第2次大戦中ナチス・ドイツに協力した)ヴィシー政権2の流れをくむすべての動きを排除した点にあります。ヴィシー政権は、フランスの歴史の中で偶発に起きた逸脱であり、これに関係する者が主流になってはならないと、彼は考えました。(国民連合の前身)「国民戦線」の結党時には、対独協力者が多数かかわったため、主流になれなかったのです。

――確かに、国民連合の前身「国民戦線」の初代党首ジャン=マリー・ルペン(96)はそのような限界を認識していたように思えます。彼の振る舞いを見ると、彼が真に政権を獲得したいのではなく、むしろ自らの役割を政界の道化師と位置づけていたのでしょう。その政党が現在、政権の一歩手前まで来ています。いったい何が変わったのですか。

 1つは、パリのエリートを取り込む戦略に国民連合が取り組んだことです。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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