Weekly北朝鮮『労働新聞』 (75)

北朝鮮の新たな友好国としてベラルーシが浮上(2024年7月21日~7月27日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年7月29日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
7月23日、平壌に到着し北朝鮮側の歓迎を受けるベラルーシのマキシム・ルイジェンコフ外相(中央左側:『労働新聞』HPより)
ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長の国葬に、中国の王滬寧・政治協商会議主席らが参列した。北京では習近平国家主席自らベトナム大使館に弔問に訪れ、ラオスやキューバでは国家的な追悼期間も設けられた。ベトナム側も党機関紙で現存社会主義国およびロシア、カンボジアからの弔電を紹介したが、北朝鮮はこの中に含まれておらず、旧来の友好国と北朝鮮の間には微妙な距離が感じられる。対照的に、ロシアからは今年2月の限定的なインバウンド再開以降、すでに7つの観光団を受け入れた。露朝接近はベラルーシとの関係強化ももたらし、7月23日からはソ連崩壊後初となる同国外相の訪朝が行われた。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 今年1月、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は施政方針で「社会主義諸国との関係発展を優先課題として打ち立てる」と述べたが、ベトナム共産党のグエン・フー・チョン中央執行委員会書記長死去についての報道は比較的あっさりしたものであった。7月20日付1面トップに金正恩による弔電が掲載されたのに続き、26日付1面トップはハノイで挙行された国葬に際して金正恩が花輪を送ったことを報じた。国葬への筆頭参列者はリ・ホジュン駐越臨時代理大使である。さらに、駐朝ベトナム大使館には趙甬元(チョ・ヨンウォン)朝鮮労働党中央委員会書記が金正恩名義の花輪を持参し、崔善姫(チェ・ソニ)外相と金成男(キム・ソンナム)党中央委員会国際部長も弔問に同行したことが報じられた。

 1969年9月にホー・チ・ミン主席が死去した際には第1面全面が使われて訃報とともに追悼社説や略歴、肖像画が掲載された。しかも北朝鮮の党中央委員会政治委員会(現在の政治局)と内閣は「全国哀悼の日」を定め、国内すべての機関や学校、農村などで弔旗を掲げることや、歌舞の禁止を決定するほどベトナムとの友好関係を誇示した。

 今回の国葬には、日本から菅義偉前総理、韓国から韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理、中国から序列第4位の王滬寧・政治協商会議主席らが参列し、北京では習近平国家主席自らベトナム大使館に弔問に訪れたばかりか、ラオスやキューバでは国家的な追悼期間も設けられた。

 一方、ベトナム共産党機関紙『ニャンザン(人民)』20日付は、訃報、トー・ラム国家主席による追悼文とともに、各国首脳から弔電が寄せられたことについてラオス、中国、カンボジア、キューバ、ロシアの順で紹介した。現存の社会主義国でここから漏れたのは北朝鮮だけであり、金正恩から弔電が送られたことについては21日付に日米韓などの首脳とともに並べられた。

カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top