BRICSは反欧米“多数派工作”の場になるか
Foresight World Watcher's 8Tips
10月22~24日にロシアのカザンで開かれたBRICS首脳会議は、30もの国・機関が参加する大規模なものになりました。採択された共同宣言には西側牽制も強調され、「反欧米グループ」形成につなげたい中露の意向が滲むイベントだったと言えるでしょう。
一方で、やはりBRICSの主要構成国であるインドやブラジルはこうした中露に同調せず、これをBRICSの亀裂だとする議論も多くあります。ただ、ほぼ同時期(23~25日)に米ワシントンで開催されたG20およびG7の財務相・中央銀行会議も、強い共同歩調を打ち出したとは言い難い。特にG20は枠組みそのものの形骸化すら指摘されています。
「自由と民主の欧米 vs 強権国家(中露)」という冷戦期の残滓を残した構図が、それぞれの陣営内で相対化されつつある。代わって活発化しているのは、地域ごと、あるいは利害やイシューごとに国家間の連携を築く動きと言えるのではないか。BRICS首脳会議で相次いだ参加国個別の首脳会談、あるいはBRICS拡大に向けて打ち出された「パートナー国」候補にトルコをはじめ欧米とも親密な国の名があることを鑑みるに、「ポスト・ポスト冷戦」の国際社会の姿が鮮明になりつつあることを感じます。
フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事8本、皆様もよろしければご一緒に。
Can BRICS Finally Take On the West?【Keith Johnson/Foreign Policy/10月21日付】
イスラエルは、イランから受けたミサイル攻撃への報復として10月26日未明(現地時間、以下同様)、イランの軍事施設への空爆などに踏み切った。その直前まで、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領はロシア西部で行われたBRICS首脳会議に出席していた。
BRICSサミットには加盟国として、名称の由来であるブラジル、インド、中国、ロシア、南アフリカに加え、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアの首脳が出席(ブラジルのみオンライン)していたほか、加盟国以外からもサウジアラビア、トルコ、パレスチナ暫定国家、国連などがトップや外相を送り込んでいた。仮に会合開催中に報復攻撃を行なえば、イランにイスラエル批判の(あるいはロシアに米国批判の)絶好の機会を与えただろう。
今年のBRICSサミットでは、露印(ウクライナ侵攻開始後3回目)や中印(5年ぶり)といった2カ国首脳会談も開かれて注目を集めたが、首脳会合そのものも、グローバルサウスの存在感を示すものとして、更に言えばロシア・中国による“多数派工作”の場として、英語圏のメディアでも大きく取り上げられている。
「イラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦が正式に同ブロックに加盟して以来、初めての全体会合となる今年のサミットでは、米国および西欧の覇権に挑戦する真の多極的世界秩序の構築に関するいつものテーマが語られるだろう」
「大きな疑問は、ますます多様化するこのクラブが、欧米主導の国際秩序に代わる現実的な選択肢を作り出すことができるのか、それとも、成り上がり者たちの戦いの場に成り下がるのかという点だ」
このように指摘するのは米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌の地政学・エネルギー担当記者、キース・ジョンソンだ。会合開催前の10月21日付で公開された「BRICSはついに西側に対峙できるか?」では、BRICSの現状についての識者たちの見解を次のように紹介している。
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