今こそ国のグランドデザインを

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2011年3月31日
エリア: 日本
「復旧」だけでなく「復興」のビジョンが必要だ(岩手県宮古市田老地区)(c)時事
「復旧」だけでなく「復興」のビジョンが必要だ(岩手県宮古市田老地区)(c)時事

 東日本大震災から10日余りが過ぎた3月22日、枝野幸男官房長官は記者会見で、震災復興に向けた施策を統括的に担当する「復興庁」の設置に取り組む姿勢を示した。1923年の関東大震災の際に「帝都復興院」を設けて復興計画の原案を作成した例にならったもので、自民党の石原伸晃幹事長や公明党の井上義久幹事長などから設置を求める声が上がっていたものだ。みんなの党も25日に、与野党党首や自治体の首長、民間人を議員とする「東日本復興院」を仙台に置く構想を発表した。  枝野氏は会見で、「復興に対して、まとまった機能を果たしていく組織は、当然考えていかなければならない」と述べたが、その後の具体的な動きは鈍い。というのも半月以上たっても死者数すら確定できない未曾有の大惨事に加えて、福島第1原子力発電所の事故が一向に収束に向かわず、官邸は被災者救援・原発対応に忙殺されていることから、「復興にまで頭が回らない」というのが実態なのだ。

被災者救援は最重要だが

 事実、震災後に「復興案の早期策定」を求めて元議員がある官房副長官に電話したところ、「重要性は分かりますが、今はその余裕がありません」という反応だったという。菅直人首相に「シンクタンク」と位置づけられていたはずの国家戦略室は、ほとんどが被災者救援対策に駆り出され、中長期的な戦略を策定する「頭脳」が政権内に存在しない状態が続いていると言っても過言ではない。
 緊急時となって平時の業務を事実上見合わせている官僚たちも内閣官房や内閣府には多数いるが、業務の変更などを的確に指示できる幹部がいないことから動くに動けないというのが実情だ。民主党が掲げた「政治主導」も、主導するはずの大臣や副大臣、大臣政務官が緊急対応で手一杯となれば、まったく機能しない。
 復興庁が設立に向けて動き出したにしても、厄介な問題がある。ひと口に「復興庁」「復興院」と言っても、発言する人の立場によって思いが異なることだ。
 岩手県の達増拓也知事は真っ先に「東北復興院」の必要性を訴えたひとりだが、「県や市町村のキャパシティーを超える事態に直面している」という窮状を救うために「国」が乗り出して欲しい、という意見だった。救援活動が各省庁バラバラに動くのではなく、一本化された「国の機関」が行なうことは重要だが、要は、目先の救援を担う組織の整備が求められているわけだ。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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