経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(39)

米国経済「日本化」のメカニズム

田中直毅
執筆者:田中直毅 2011年9月1日
エリア: ヨーロッパ 北米

「デレバレッジ(借入金の返済)」と「日本化(ジャパナイゼーション)」という決め言葉が米国の金融を覆い始めるとともに、ドル安・円高の動きに弾みがついてしまった。米国経済が陥ったこの局面からの回復には、どう少なく見積っても2年程を要するのではないか。逆に言えば、日本が異常な円高からの脱却を図る必要があると判断した時には、投機筋への短期的な対応策を超える日本経済全体の活性化策を練ることが不可欠となった。

渦巻くFRB批判

 8月26日のワイオミング州ジャクソンホールでのバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の演説は「肩すかし」であった。まず第1に、過去1年間の金融政策が所期の目的を達することができなかったことについての原因究明の言がなかったことである。責任回避の批判がバーナンキに対して今後は増えることになろう。第2には、今後の金融政策について、いかに手詰りといえども、何らの具体的言及もなかったことだ。1年前のこの会議では量的緩和への踏み込みを示唆し、ジャクソンホールという都市の名を世界中に知らしめたほどだったのに比して、余りにも自信を欠くものだったといえよう。
 もちろんこれには理由がある。昨年11月から開始された第2段階の量的緩和(QE2)が世界経済のインフレ懸念を高め、原油価格を高騰させ、結果としてガソリン価格などの上昇を通じて、米国内の実質購買力をも毀損させてしまった。中国、インド、ブラジルなどが金融引き締めに追い込まれ、経済運営を困難化させた。そして米国内ではFRBの政策関与姿勢そのものへの批判が強まった。とりわけ連邦政府の経済関与に批判的な共和党陣営にあっては、FRBの役割そのものへの批判が相次いでいる。テキサス州のロン・ポール下院議員がその嚆矢ともいえる。『FRBをなくせ』という著作まで出したのだ。共和党の大統領候補のひとりであるリック・ペリー・テキサス州知事は全米的にも人気を上げてきているが、ロン・ポール下院議員の向うを張るようなFRB批判を続けている。彼らは今、FRB批判が票に直結すると受け止めているのではないか。バーナンキ議長の発言に影響を与えかねないほど、メディアのFRB批判も喧しい。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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