欧州を眺め考える場に

国末憲人
執筆者:国末憲人 2011年9月7日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 南欧諸国の財政危機、単一通貨ユーロの凋落、ノルウェーで起きた連続テロ――。ヨーロッパから届く最近のニュースは、力の落ち込みぶり、社会の行き詰まりを示すものが目立ちます。米国、日本と並ぶ極として世界を動かした影響力はかげりを隠せず、中国やインドの威勢のよさに比べるべくもありません。日本のメディアの中にも、ヨーロッパの支局を閉鎖して取材体制を縮小し、その余力を新興国に回す動きが出てきています。

 でも、だからといってヨーロッパから目を離し、新たな動きばかりを追うのが賢明だとは思えません。ヨーロッパはまだまだ、私たち日本が注目すべき要素を持っています。

 1つには、ヨーロッパが私たちの将来の姿を指し示していることです。ヨーロッパは大ざっぱに言って、日本より20年から30年、歴史の先を進んでいるといえます。ヨーロッパが今抱える問題は、明日の日本が抱える問題です。年老いて力を失った先達の姿を凝視するのは、あまり気分のいい作業ではありません。でも、その姿をしっかり見つめ、問題点を認識することが、自身のより良い老後を確保することにつながるのだろうと思います。

 2つ目に、ヨーロッパは依然として、独自の世界観を提示し続ける能力を持っていることです。私たち日本は何よりアジアの一員であり、それ以上に米国の価値観から多大な影響を受けています。世界を見るのも、米国の目を通じてのケースが少なくありません。だからこそ、米国と異なる視点で世界を理解するヨーロッパ、特に大陸欧州の存在が貴重であり、私たち日本を客観的に見つめる助けにもなるでしょう。欧米間の差異は普段、共有する歴史や大西洋同盟の影響もあって、それほど目立ちません。しかし、イラク戦争のように世界に変化が生じる時、その違いが国際政治を動かす要因にもなります。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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