「中国建国以来最悪の密輸事件」の裁判が始まった

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年4月8日

 アモイを舞台に「中華人民共和国建国以来最悪の密輸事件」の主犯として世の中を騒がせてきた頼昌星の裁判が、先週、アモイの中級人民法院で始まった。

内容は「公開審理」と銘打ってはいるものの、メディアへの一般取材は許可されず、内容は新華社の転載のみが認められた。やっぱりそうかと思いつつ、肩すかしを食った気分になった。

頼昌星の密輸事件で、300人以上が取り調べをうけ、死刑判決を受けた役人などは10人を超える。本人は10年以上もカナダに身を置いて亡命を求めていたが、極めて複雑な外交交渉の末、昨年、中国に身柄を戻された。ただ、条件は公表されていないが死刑にしないという暗黙の了解がカナダ側に中国から与えられているようだ。

頼昌星の密輸はすさまじいもので、1990年代後半、「遠華集団」という企業のもとで、石油、化学原料、タバコ、車、家具などを、なんでもかんでもアモイ港から税関を通さずに密輸しまくった。公的に認定された金額は530億人民元(1元=12円)だが、実際はその何倍もあったことは疑いようがない。

その密輸が最も猖獗を極めていたとされる1998年から99年にかけて、私は密輸の現場であるアモイの廈門大学に留学していた。当時のアモイの街は空前の繁栄に包まれていて、高級レストランはどこに行っても満席で、タクシーはなかなか捕まらず、アモイ全体にただれた雰囲気が漂っていたことを思い出す。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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