見捨てられるウクライナ:「ロシアの言い分」と「独仏の欺瞞」

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2014年3月19日
エリア: ヨーロッパ ロシア

 ロシアがクリミア自治共和国の独立を承認、プーチン大統領はロシアに編入する条約をクリミア自治共和国首相らと結んだ。「冷戦の再来か」と騒がれる中で、ヨーロッパは国際社会の激動に翻弄されてなすすべもない。対話による事態収拾の目処はなく、当面武力介入もないので、事態はロシアの望む形になる可能性が高い。冷戦終結以後の世界をどうとらえるのかという議論は、「多極化」から「一極化」へと推移し、さらに新たな「二極化」ないし「多極化」の様相を一気に帯びてきた。新しい二極・多極体制は、「多極化時代」と呼ばれた1970年代以上に、競争力のあるBRICS諸国のような「準大国」を多くもつ複雑な構造となっている。西欧諸国は錯綜する新しい世界秩序の中で難しい立ち位置を強いられているが、その根底には旧態依然たる大国意識が残存している。

 

クリミアの92年憲法

 3月16日に実施されたクリミア自治共和国での住民投票で、95%以上の支持率で同共和国の独立が決定、ロシアへの編入も時間の問題となった。21日のロシア連邦議会で、独立したクリミア共和国をロシアに編入するための法律が採択される見通しだ。

 クリミアは1992年5月に国家独立を宣言し、ウクライナとの対等な関係を定めたクリミア共和国憲法を成立させたが、同時にクリミアをウクライナの一部として位置づけていた。しかし、クリミアの独立に警戒感を抱いたウクライナの強硬姿勢でクリミア憲法は大幅に修正され、それ以後クリミアはウクライナ憲法の下での自治権を有する共和国になった。その後、自治共和国内の親露派は92年憲法の復活を意図したが、ウクライナの弾圧で実現していなかった。ウクライナ支配の下で圧迫されていた親露派の積年の思いがついに実現した。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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