いずれタイの首を絞める“タクシン派潰し”の禍根

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2007年8月号
カテゴリ: 国際

 タクシン前タイ首相(五七)を昭和初期の日本に登場させてみよう。 彼は莫大な資産で作り上げた巨大与党を武器に、それまでのルールや権威を半ば無視した政治を推し進める。だがその手法は却って経済を活性化し国力を増すことにつながり、外交的得点を挙げるばかりか貧しい民衆からの支持も絶大。軍部の威信は低下し、既存勢力は苦々しい思いを募らせる。そこで、軍上層が“大御心”を錦の御旗に反撃に転じた。 こう考えると昨年九月の国軍によるタクシン追放クーデターの背景は納得できそうだが、その後の展開は、前代未聞の事態の連続である。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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