経済に足をとられる“親日転向”ベトナム首相

執筆者:松本毅 2008年4月号
カテゴリ: 国際 金融

中国寄りかと懸念されたが、日米欧との絆を強め、外資呼び込みに成功したズン首相。だが、インフレや株下落が足を引っぱり……。[ハノイ発]「政府は明らかに経済動向を見誤った。わが国の経済は一段と不安定さを増している」 二月末、ハノイ市内で開かれた記者会見でのブー・バン・ニン財務相の発言だ。昨年以降、拍車がかかっているインフレ昂進に中央政府の対策が後手に回っているのでは、との地元新聞記者の指摘への弁明だったが、閣僚自らが中央政府の失政を認めたと捉えられかねない内容の発言を公の場でするのは、ベトナムでは異例中の異例。会見の間、ニン財務相は自身の責任分野である金融政策には触れず、海外からの直接および間接投資の急増を政府がコントロールできていないことなど、政府全体の経済政策運営に関わる部分を“誤算”の例に挙げた。 会見に出席したある国営メディアのベテラン記者がこう解説してくれた。「ニン財務相の発言から、ズン政権内部が一枚岩ではなくなっている状況が明らかに読み取れる」。 第十回共産党大会直後の二〇〇六年六月の国会で発足したズン政権。五十代半ばの若さで首相に昇格したグエン・タン・ズン首相は、その年にハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を無難にこなし、翌年一月には念願だった世界貿易機関(WTO)加盟を実現。汚職対策の推進で改革に向けたリーダーシップを世界にアピールし、日本のほか米国、欧州連合(EU)など支援国の支持を固めることに成功した。経済面でも海外直接投資の拡大、GDP(国内総生産)成長率で八%を超す経済成長の実現など、その滑り出しは順風満帆。就任からわずか一年で、欧米外交筋は「二期十年の長期政権は確実」と分析したほどだ。

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