経済学は「人間の心」をどう扱ってきたか

執筆者:堂目卓生 2009年8月号
カテゴリ: 経済・ビジネス 金融

 サブプライム問題を発端とした世界不況によって、現在、市場経済に対する人びとの信頼は大きく揺らいでいるといえよう。さらに、人びとの不信は、市場経済の効率性と安定性を主張してきた経済学者にも向けられ、一部の金融業者と同様、経済学者にもモラルが欠如しているかのような印象が広まっている。 しかしながら、アダム・スミス(一七二三―九〇)以来、経済学者は市場経済におけるモラルの問題、より広くは人間の心の問題に無関心であったわけではない。多くの経済学者は、人間とは何か、人間は何を求める存在なのかをよく考えた上で経済のありかたを論じようとした。 経済学者が共有してきたと思われる枠組みは図のように示すことができる。まず、経済学は、「理論」と「政策」に分けられる。理論の領域においては、価格や国民所得などの経済的「諸事実」にもとづいて「諸理論」が形成される。一方、政策の領域においては、諸事実と諸理論、および「立法者の規範原理」(政策当局が採用する善悪の判断基準)にもとづいて、何らかの「目標」が設定される。そして、設定された目標を最もよく達成する「手段」が選択され、具体的な「ルール」や「制度」が構築される。

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執筆者プロフィール
堂目卓生 大阪大学大学院教授。1959年生れ。京都大学大学院博士課程修了(経済学博士)。18世紀および19世紀のイギリスの経済学を専門とし、経済学の思想的・人間学的基礎を研究。おもに英語圏の学術誌で論文を発表してきた。著書『アダム・スミス――「道徳感情論」と「国富論」の世界』(中公新書)でサントリー学芸賞受賞。
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