経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(19)

「雇用が伸びない」中国で台頭する「構造改革派」

田中直毅
執筆者:田中直毅 2009年9月号
エリア: 中国・台湾

 いまやグローバル経済を構成する重要な要素となった中国経済の内部においても、各国が悩み抜いてきた歴史的課題が反映するに至っている。生物が受精卵から成体になるまでの個体発生の過程において系統発生を繰り返すように、国民経済の発展過程にも歴史を刻んだ世界各国の経験値が反映することは稀ではない。個体としての中国もまた、共通の形質を先進工業国と共有したとしても何ら不思議ではないのだ。 中国政府にとって雇用情勢を悪化させないためには年平均八%台の経済成長率が不可欠だと深く信じられてきた。国務院総理の温家宝はつい最近もこの八%目標との関連で現実の政策展開について触れた。従って世界的な金融危機からの悪影響に襲われた本年を通じても、この方針が掲げられることであろう。 しかし中国の内部でまったく異なる仮説と問題提起とが登場しつつある。成長率死守ではなく、この際、構造転換を図るべきではないか、という立論である。数年前までは考えられなかった経済の厳しい現実が足元を洗い始めたため、沖合いの波頭の崩れを見れば、足元に波が至るまでの間にあって従来とは別の展開を考えざるをえなくなったのだ。「成長率八%」は必要なのか 沿岸部の工業地帯では輸出用の組立加工が主体であった。しかし今年の第1四半期には輸出が対前年比で二〇%近いマイナスとなり、農村から沿岸部に働きに来ていた「農民工」は内陸に戻されることになった。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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