前大統領の突然の死がアルゼンチン政治に与えた衝撃

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2010年10月30日
カテゴリ: 国際 政治 金融
エリア: 中南米

 10月27日ネストール・キルチネル前大統領が心臓発作により、アルゼンチン南部サンタクルス県のリゾート地の自宅で倒れ、死亡した。29日ブエノスアイレスで行われた葬儀には17万人の市民が大統領官邸内の棺に横たわる前大統領に別れを告げた。雨の下で葬列は深い悲しみに包まれたと、報道は伝えている。

 葬儀には南米諸国の元首がこぞって出席するなど、前大統領の突然の訃報は内外に衝撃をもって受け止められた。3年前、夫人のクリスティナ・フェルナデス上院議員が大統領に当選し政権を引き継いだ時は夫婦間の権力継承と話題を呼んだが、与党ペロン党を仕切る前大統領が実質的に政権運営を担い、来年の大統領選挙に再出馬するとみられてきたからである。またルラ・ブラジル大統領やチャベス・ベネズエラ大統領の肝煎りで対米関係を意識して結成された南米諸国連合(UNASUR)の初代事務局長に就いていたことにもよる。

 「一つの時代の終わり」(エコノミスト)、「新たな時代の始まり」「ペロニズムは指導者を失い、空白が将来を決める」(現地有力紙クラリン)、「深刻な政治的不確さの時代の幕開け」(ニューヨークタイムズ)、「将来に大きな空白残す」(フィナンシャルタイムズ)、「不確定さとともに変化の可能性を開く」(ウォールストリートジャーナル)と、各紙電子版は実力者の死がアルゼンチン政治に及ぼすであろうその影響の大きさ、深さを伝えている。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順