経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(30)

「隷従への道」か「市場の声」か

田中直毅
執筆者:田中直毅 2010年12月3日
エリア: ヨーロッパ 北米
11月8日、BIS総裁会議後の記者会見に臨む欧州中央銀行のトリシェ総裁 (C)AFP=時事
11月8日、BIS総裁会議後の記者会見に臨む欧州中央銀行のトリシェ総裁 (C)AFP=時事

 リーマン・ブラザーズ社の破綻から始まった世界経済の変動は、2年を経過しても収まらないだけではなく、更なる影響の波及が観察されるに至った。その広域性と、こだまが行きかうような波動の重なりこそが、グローバル経済のダイナミックスの特徴となってきた。患者の病状を診断し、治療の任にあたる臨床医は、病名の特定を行なわねばならない。誤診かどうかは、死体解剖によって病源が特定されてはじめて分かるというに過ぎない。今回の世界経済という患者に臨む医師は、基礎医学の遅れにいらだちを隠せないでいる。しかし、患者に処方箋を用意せねばならない立場からすれば、過去の基礎医学の業績がいかに心許ないとしても、診断拒否が職場放棄に直結する以上、自己の職業上の責任感覚だけを頼りに一歩前に出る以外ないのだ。

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執筆者プロフィール
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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