砕けたスリーダイヤの威信

執筆者:杜耕次 2000年10月号
カテゴリ: 経済・ビジネス 金融

三菱自動車事件が象徴する最強企業集団の落日 笑止千万というほかない。 三十一年間にわたるリコール(無料の回収・修理)隠しが発覚してメーカーとしての信頼が地に落ちた三菱自動車工業が、九月末に発表した社内処分のことである。 河添克彦社長は十月三十一日付で引責辞任するものの、取締役の肩書きは残る。問題発覚当初、「雪印の二の舞というのは大間違い」などと大見得を切っていたにもかかわらず、組織的な背信行為が次々に明らかになった。それでも辞任の決断ができず、複数の三菱グループ首脳の諫言によってようやく腹をくくった。だが、その結果が前任社長がボード・メンバーに残留する不自然な経営形態である。不信を募らせる顧客ユーザーや投資家がこの“刷新人事”をどう受け止めるか。この会社にはいまだに理解できていない。 倫理担当役員だった横川文一副社長の処分は、さらに奇々怪々だ。副社長から取締役に降格とはいうものの、代表権は剥奪されず、最高財務責任者(CFO)の職務も引き続き担当する。リコール隠しの発覚当初から社内外で失言を繰り返していたといわれ、河添社長以上に、事の重大さが認識できていないフシがある。 例えば、新車販売への影響についてある時期、「事件をきっかけにした新車販売の減少はない。むしろ業界水準をやや上回っているほど」(九月十三日付産経新聞)と強気のコメントを発していた。ところが、いざフタを開けてみると、九月の三菱自動車の販売台数は普通車が前年同月比十六%、軽自動車が同二〇%のいずれも大幅減。また、リコール隠しの発覚直後にもかかわらず、財界団体主催の企業倫理セミナーにパネリストとして出席した事実もある。善意に解釈しても、情報収集力の欠如や見通しの甘さによって経営者としての資質を疑わざるをえない。

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