私の「濡れ落ち葉保険」

成毛眞
執筆者:成毛眞 2001年12月号
カテゴリ: 文化・歴史

 四十歳を過ぎてから、来るべき老後に備えていろいろなものを備蓄している。これは、仕事が一段落し、家族からも疎んじられた場合に備えての「濡れ落ち葉保険」だ。備蓄品とはカメラ、書籍、レコードなど。あと三十年も経てば銀塩フィルムカメラも骨董品になる。孫に自慢ができるはずだ。読まずにとってある数千冊の書籍は、若かりしころの社会・風俗を日がな一日懐かしむのに役に立つだろう。 レコードはおもに五〇―六〇年代のジャズ。一年前から集め始めたのだが、すでに四百枚近くに達している。しかし、どんなレコードがあるのかと聞かれると答えに窮する。マイルス・デイビスやコルトレーンなどのいくつかのタイトルは覚えているが、八割のレコードははじめて聞くものばかりだ。 大学時代、缶ピースを片手に渋谷や日暮里のジャズ喫茶に通った。本当にジャズが好きだったのではない。東京の学生にバカにされないよう、安い経費で都会生活者を演出するのが目的だった。少なからぬ友人が同じ思いであったことをあとで知った。自分を含め、彼らのほとんどが今ではサザンオールスターズをカラオケの持ち歌にしている。学生運動時代のヘルメットとタオルを脱ぎ捨て、株価に一喜一憂しているのも同様の仕儀。

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執筆者プロフィール
成毛眞
成毛眞 中央大学卒業後、自動車部品メーカー、株式会社アスキーなどを経て、1986年マイクロソフト株式会社に入社。1991(平成3)年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。さまざまなベンチャー企業の取締役・顧問、早稲田大学客員教授ほか、「おすすめ本」を紹介する「HONZ」代表を務める。著書に『本は10冊同時に読め!』『日本人の9割に英語はいらない』『就活に「日経」はいらない』『大人げない大人になれ!』『ビル・ゲイツとやり合うために仕方なく英語を練習しました。 成毛式「割り切り&手抜き」勉強法』など(写真©岡倉禎志)。
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