長く中国を取材していてよく感じた違和感の1つに、中国人の強国意識の矛盾があった。中国が大国であることは世界の誰も異存のないところだ。人口も面積も歴史も大国の名にふさわしい。ところが、これが強国かどうかとなると、議論百出、中国人の間でもはっきり意見が割れた。
中国人自身の内面に歴史的経緯で埋め込まれた「強国ではない」という根深い劣等感があると同時に、近年の経済発展や軍備拡張によって「強国になった」という優越感が急激に拡大し、劣等感と優越感との間を揺れ動いていたからである。ところがここ数年はこうした「強国か否か」について、もはや中国人は悩むことがなくなったようだ。強国意識がすでに中国人の内面に矛盾なく定着したからである。
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