「大倒産時代」の幕開けは「統一地方選」後

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2015年4月16日
エリア: 日本

 安倍晋三内閣の発足以来、ほぼ一貫して減少してきた企業倒産件数に変化の兆しが現れた。
 東京商工リサーチが4月8日に発表した2015年3月の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)が、前年同月比5.5%増の859件と増加に転じたのだ。2012年12月の第2次内閣発足以降、倒産件数がプラスになった月は過去に2回だけ。しかも2014年4月は1.7%増、同年9月は0.9%増と増加率は小さかった。
 ところが、3月は5.5%増。2012年10月の6.0%増以来の大きさで、アベノミクスが始まって以来、初めての本格的な倒産件数の増加と言っていいだろう。東京商工リサーチでは、「原材料の値上げに伴う仕入れ価格の上昇で、流通関連の倒産増加が目立った」と分析していた。

 

「ゾンビ企業」の量産

 とは言え、これでアベノミクスが息切れした、と考えるのは気が早い。
 確かに安倍首相は昨年末の総選挙以来、繰り返し「民主党政権時代よりも2割、倒産を減らしました」と語ってきた。アベノミクスによって「行き過ぎた円高」が是正されるなどして企業業績が好転した結果、倒産が減っていたという論法である。
 だが、現実は少し違う。年間の倒産件数は小泉純一郎政権が始まった2001年が1万9164件とピークで、2005年には1万2998件まで減少したが、その後、再び増加。リーマンショックのあった2008年に1万5646件と直近のピークを付けたのだ。ところが、それ以降、倒産件数は減少に転じ、民主党政権時代を含めて大きく減っていたのである。
 2009年はリーマンショックの余波で猛烈に円高が進んだことから、電機メーカーなど輸出産業を中心に軒並み赤字に転落、企業が最も苦境に立たされた時期だった。しかし、その2009年ですら、前年より倒産件数は166件減っていたのだ。
 ではなぜ、倒産件数は減少が続いてきたのだろうか。民主党政権下で金融担当相を務めた亀井静香・国民新党代表(当時)が半ば強引に導入した「中小企業金融円滑化法」の効果が大きかったのは間違いない。「亀井モラトリアム」と呼ばれた中小企業救済策である。
 その法律では、中小企業などの求めがあった場合、金融機関はできる限り貸付条件の変更に応じなければならないとされた。結果的に、破綻の危機に瀕した中小企業の資金繰りを助けることとなり、倒産件数は激減したのである。
 そもそも同法は、リーマンショック後の景気悪化に対応する緊急措置として2009年12月に施行された。期限を区切った時限立法だったが、その後、東日本大震災が発生したこともあって、2度にわたって延長された。
 金融庁の集計によると、この間に条件変更が行われた融資の件数は、のべ401万9733件。見直し対象になった融資金額は111兆7424億円にのぼった。本来なら倒産して淘汰されたはずが、追い貸しによって生きながらえる「ゾンビ企業」を量産することになったのだ。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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