リスク議論の本質を見失った安保法制審議

林吉永
執筆者:林吉永 2015年6月16日
カテゴリ: 政治 外交・安全保障
エリア: 日本

 日本の国会では、「安全保障のために行動する自衛隊(軍)の安全をいかに保障するかという議論が真剣に行われている」という世界に通用しないジョークがあるようだ。

 安全保障法制制定の国会審議における野党の質問は、首相の揚げ足取りの企図に満ちている。しかも議論は、多くの国民が感じている「分かり難さ」を払拭するのではなく、与野党それぞれの安全保障に関わる主張の場でもなく、真実や本音をことさら糊塗、迂回している首相答弁に対する野党の「アラ探し」と「野次」の攻め合いの様相を呈し、野次馬の岡目八目には面白く映っている。

 そもそも自衛隊が行動する場におけるリスクの有無を問うことは、「言わずもがな、問わずもがな」であって、本来の重大かつ深刻な「国家の存亡と国民の生活・生命・財産が被るリスク」に関する議論を優先すべきである。

 自衛隊の行動任務は、「武器使用」、「武力行使」が前提の「軍事的役割」として、「防衛出動(自衛隊法第76条―以下同じ)」「防衛出動待機(77条)」「治安出動(78条)」「治安出動待機及び武器を携行する情報収集(79条)」「海上保安庁の防衛大臣統制下への編入(80条)」「都道府県知事の要請による治安出動・自衛隊及び指定された在日米軍施設等の警護活動(81条)」「海上における警備・海賊対処・弾道ミサイル等破壊措置(82条)」「対領空侵犯措置・機雷等の除去・在外邦人の輸送・国際協力活動を伴う後方地域支援等(84条)」が定められ、「非軍事的役割」には、「災害派遣・地震防災派遣・原子力災害派遣(83条)」がある。

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執筆者プロフィール
林吉永
林吉永 はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
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