テロリストの誕生(20)終わらない結末

国末憲人

 1月9日午後、フランスは2つの立てこもり事件で騒然としていた。『シャルリー・エブド』編集部を襲撃したクアシ兄弟がパリ北東ダマルタン=アン=ゴエルの印刷工場「CTD」に入り込んで立てこもった事件と、パリ市内東部でアメディ・クリバリがユダヤ教徒向けスーパー「イペール・カシェール」で客らを人質に取った事件である。双方とも特殊部隊が完全包囲しつつ、膠着状態を打開する糸口を探っていた。

 この日午前中、クアシ兄弟がニュース専門局『BFMTV』の電話インタビューに応じたのは、すでに述べた通りである(2015年8月29日「テロリストの誕生(18)『いよいよ戦争だ!』」参照)。午後3時ごろになると、今度はクリバリが同局のインタビューに応じた。クアシ兄弟の場合、テレビ局の記者が印刷工場にかけた電話がきっかけだったが、クリバリの場合は、クリバリ自らテレビ局に連絡を取ったのだった。

 最初、クリバリは持ち込んだパソコンでニュースを見ようとした。接続がうまくいかず、店にあったパソコンを人質に操作させた。映し出されたニュースは「まだ死者はいない」と伝えている。メディアは店内に入れず、遺体も確認できないから、そう伝えるのは当然である。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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