経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(81)

日本だけではない「マイナス金利」がぶち当たった「厚い壁」

田中直毅
執筆者:田中直毅 2016年5月24日
エリア: ヨーロッパ 日本

 日本のバブル崩壊は1990年だった。
 株価は前年の暮れにピークをつけ、年明けからは全く精彩を欠いた。そして高騰を続けた地価も夏ごろから取引事例の急減のなかで怪しくなり、秋からは急落が始まった。これが銀行の不良債権急増の直接の原因となったが、金融危機の開始は1997年の秋のことだった。
 われわれはその後の日本経済像についても、ついに本格的な構造改革案を作成できなかったがゆえに、依然として政策の混迷を引きずっている。しかし世界的な視野に立てば、2008年に生じた金融危機こそが、あらゆる国での経済政策の手詰まりの原因となったことは明らかだ。そして結果として政策の混迷が地球規模で生じているというべきだろう。この2008年からの危機について、日本はそれ以前からの危機の深刻さのゆえに少し感度が鈍いところがある。だが実際には、中国の大停滞だけをあげつらう余裕などないのである。 

8割以上の日本国債の利回りが「水没」

 今や、日本国国債(JGB)の利回りは異常状態に陥った。財投債を含めた普通国債の発行残高は約900兆円だが、その利回りをみると償還期限が11年、12年ものまでマイナスとなった。これでJGB残高の8割以上の利回りが水没したことになる。これは何を意味するのか。
 10年後に償還されるときの値段は100円のJGBが102円で取引されている。利回りはマイナス0.1%である。買い手が10年後まで持ち続けることは、もちろんない。なぜなら満期償還ならば、みすみす2円も損するからだ。彼らが買うのは、日本銀行がいずれ102円よりも高い価格で買ってくれると判断しているからだ。日銀は市場から年間80兆円のペースで長期国債を買うという方針を政策委員会の大多数で確認したところだ。しかもマイナス金利の幅をもっと広げる、即ち102円よりも高い値段で買い取ることは、投資促進という政策目的のためにはありうることだとしている。JGBの高値に臆することはない、という投資家が昨今では増えたことが値づけに反映しているのだ。 

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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