経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(84)

「杭州G20」を迎える「中国経済」の逃げ場なき惨状

田中直毅
執筆者:田中直毅 2016年9月2日
エリア: 中国・台湾

 2016年上半期の中国経済の運営の実態は、これ以上の「金融緩慢」(資金調達が非常に容易な状態)が考えられないほどのものだった。「資源配分が歪む」という悲鳴が、また「住宅バブルの後始末が心配だ」という嘆息が、中国の経済学者のなかから聞こえた。
 ところが現実は、一層過酷なものとなった。民間企業の固定資本投資は6月にはついに対前年同月比でマイナスとなり、7月には1.7%にまでマイナス幅が広がったのだ。9月4・5の両日は、いまやアリババの拠点として国際的に認識される杭州においてG20の首脳会議が開かれるが、中国経済の失調は隠しようもない。

「負債拡大」と「金融不全」

 こうした惨状にあって、7月に入ると習近平総書記が経済研究者や実務家を集めた。すると日時を置かずに李克強首相が同種の会合を開いた。この2つの会合において重複出席は、中国人民銀行と国家発展改革委員会を代表する2名に限られていた。彼らの役割は、前者は金融緩和の実情の、後者は鉄道投資などの財政からの刺激策の説明要員という位置づけだったと思われる。総書記のもとには構造改革が不可欠という論者が、首相のもとには行政の担当者が中心に集められていたといってよい。これ自体がただならぬ情勢を表しているが、金融担当と財政担当との間で、相手に責めを帰すようなもの言いになったことも窺える。なぜならその後、人民銀行と国家発展改革委員会は相手の不作為を責めるに等しい総括を発表するからだ。
 何が中国において政策の手詰まりを生んでいるのか。まず第1は、負債の水準の急速な高まりだ。Institute of International Finance(IIF)によれば、中国の負債総額はGDP比率で298%に及んだという。直近の1年でも274%から更に増加したことになる。
 こうなればマクロ政策の課題は負債削減(デレバレッジ)となる。金詰りとなった地方政府や国有企業は、銀行に対して実質上の救済を求めざるをえない。
 手詰まりの第2は金融政策の経路がすべて封じられたということだ。まず銀行融資をみる。ここではヘアカット(銀行の持つ貸出債権の一部放棄)やデット・エクイティ・スワップ(負債と株式との交換を通ずる利払い費の抑制に直結するが、銀行の資産は劣化)が繰り返されることになる。これでは銀行の貸し出し余力は消滅する。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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