軍事のコモンセンス (14)

「国家安全保障戦略」から日本の防衛を考える

昨年10月、自衛隊観閲式に臨んだ安倍総理 (c)時事

 平成25年(2013年)12月の閣議で決定された国家安全保障戦略は、日本にとって、日露戦争終結以降、初めての国家戦略というべきものであり、これを策定した第2次安倍内閣の功績は極めて大きいものと評価する。

 それまでにあった「国防の基本方針」(1957年決定)は、「我が国の独立と平和を守るため(1)国連活動を支持し国際協調をはかり世界平和の実現を期する(2)民生を安定し愛国心を高揚し国家安全保障のための基盤を確立する(3)自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する(4)侵略に対しては国連が有効にこれを阻止する機能を果たし得るまでは米国との安全保障体制を基調として対処する」といったもので、決定当時の状況から見れば、先ずは妥当なものといえたが、その後56年間、その進捗状況は点検されず、陳腐化してそのままに放置されていたものであった。特に、変化する世界の政治・経済・外交の状況に合わせた防衛(軍事)については具体的に触れておらず、とても国家戦略とは言えないものであった。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
冨澤暉(とみざわひかる) 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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