マネーの魔術史
マネーの魔術史(11)

南部の政府紙幣グレイバックスの失敗

野口悠紀雄
執筆者:野口悠紀雄 2017年8月10日
エリア: 北米 ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 南部連合も、様々な手段で戦費調達を行った。なかでも重要な意味を持っていたのは、綿花を担保とした公債「綿花債(コットンボンド)」だ。これについては、ニーアル・ファーガソン『マネーの進化史』(早川書房)で詳しく説明されている。

 ゲティスバーグなどにおける南軍の敗北にもかかわらず、公債はほぼ価値を保った。それは戦争で綿花の需要が高まったために、綿花の価格が上昇したからだ。

 ロスチャイルド家がこの公債の購入を通じて南部を助けるのではないかと考えられていた。ニューヨークでは、ロスチャイルドの代理人オーガスト・ベルモントが、民主党の全国委員長として、1860年の大統領選でエイブラハム・リンカーンの対抗馬を熱心に応援した。『シカゴ・トリビューン』紙は、「ベルモント、ロスチャイルド一族、そしてユダヤ人たちは、南部の公債を買いあさっている」と弾劾した。ベルモントは、「まもなく北部は占領されるだろう」と言った。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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