教養としてのイギリス貴族入門 (3)

ソールズベリ侯爵家(上)

執筆者:君塚直隆 2023年1月28日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
ソールズベリ一族の居館ハットフィールド・ハウス((C)Richard Semik - stock.adobe.com)と、一族中興の祖メアリ・アメリア(右=ジョシュア・レイノルズ画)
エリザベス1世の女王秘書長官として絶大な信頼を得、ジェームズ1世時に伯爵位を授けられたが、清教徒革命や名誉革命に翻弄されたソールズベリ一族。その中興は、ひとりの女性の登場によって成し遂げられた。『貴族とは何か』(新潮選書)刊行記念スピンオフ企画第3回。

 本連載の第1回第2回で採り上げたデヴォンシャ公爵家より、爵位では一段下の侯爵で、また財力の面でもかなり劣るが、政治的な格式の面では一歩も引けを取らない名家が存在する。それがソールズベリ家(Marquess of Salisbury)である。

エリザベス1世の女王秘書長官として

 元々の家名はセシル(Cecil)。その開祖ともいうべき存在が、テューダー王朝半ばから政治の中枢に位置し続けたウィリアム(1520~1598)だった。彼の祖父はウェールズとの辺境地域に土地を持つ小地主にすぎなかったが、ウェールズを基盤とするヘンリ7世が国王となり、その守衛官に就いたことで、セシル家の運命は変わった。こののちセシル家はテューダー王朝とともに興隆の一途をたどっていく。

カテゴリ: カルチャー 社会
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執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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