Weekly北朝鮮『労働新聞』 (33)

注目される「南朝鮮」との表記が消えた意味(2023年10月1日~10月7日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年10月10日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
10月2日付紙面では、金正恩の花輪記事は2面に追いやられ、金徳訓総理(写真)の「現地了解」記事の前に掲載された(『労働新聞』HPより)
金正恩動静報道が必ずしも最優先されない傾向が散見される中、韓国関連の報道では「南朝鮮」表記が消え、「傀儡」「『大韓民国』」ばかりになっている。もはや同族ですらなく先制攻撃も辞さないという姿勢の表れなのか。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 10月2日付の第1面は、「朝鮮労働党の百勝の領導史は人民を喚起して世紀的な奇跡をもたらした栄光溢れる行路である」と題する長文論説が飾り、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が金永日(キム・ヨンイル)元朝鮮労働党中央委員会書記の霊前に花輪を送ったとの記事が第2面に追いやられた。金徳訓(キム・ドックン)内閣総理による平安(ピョンアン)道の農業部門に対する「現地了解」の記事より上位にあるとはいえ、最高指導者の動静にかかわる報道が必ずしも最優先されない傾向が散見されるのは興味深い。

 中国杭州で開催された第19回アジア競技大会についても連日報道された。1日付第3面は、「わが国の女子サッカーチームが準決勝競技に進出」と題し、前日の試合で「傀儡チームに4対1という圧倒的な点数差で打ち勝った」と報じた。韓国を「傀儡」とだけ称し、「南朝鮮」との表現を完全に排している。……

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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