Weekly北朝鮮『労働新聞』 (55)

米韓合同軍事演習への反応は抑制的(2024年3月3日~3月9日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年3月11日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
朝鮮人民軍の西部地区重要作戦訓練基地を訪問した金正恩国務委員長。「現地視察」という表現が使われたのは現政権下では初とみられる(『労働新聞』HPより)
米韓合同軍事演習に対する国防省代弁人談話では、「経済建設に大規模な軍兵力が投入された」との自国の立場も表明された。多くの軍人を「地方発展20×10政策」に動員していることが窺われる。金正恩国務委員長の重要作戦訓練基地訪問で用いた「現地視察」との表現は、現政権下では初見。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 3月4日から始まった米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」を非難する同日付の国防省代弁人談話が翌5日付『労働新聞』第3面に掲載された。「敵どもの冒険主義的な行動を引き続き注視し、朝鮮半島地域の不安定な安保環境を強力に統制するための責任ある軍事行動を継続する」と述べられたほか、米韓合同軍事演習は「人民の福利増進のために経済建設に大規模な軍兵力が投入された朝鮮民主主義人民共和国の現実と明確な対照をなしている」との認識が示された。「地方発展20×10政策」の推進に多くの軍人を動員していることを意味しており、全体として抑制的なトーンの談話となった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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