オバマ大統領のアフガン撤退計画の裏にNIE

執筆者:春名幹男 2011年6月27日
タグ: CIA タリバン
エリア: 北米 アジア

 先週オバマ米大統領が発表したアフガニスタン駐留米軍部隊の撤退計画の裏に、米インテリジェンスコミュニティが今年2月まとめた国家情報評価(NIE)があったようだ。
 オバマ大統領は2009年12月、アフガニスタンへの3万人の米軍増派(サージ)を決定した。その際、政権内ではバイデン副大統領を中心とするグループが特殊部隊による「対テロ戦略重視」を主張、ペトレアス・アフガン駐留米軍司令官、マクリスタル前同司令官らが「対ゲリラ戦闘重視」を主張した。結局大統領は後者を採用した形。
 しかし、AP通信によると、NIEでは、特殊部隊による夜間攻撃に村落ごとの治安工作を組み合わせた作戦の方が、通常部隊によるタリバン掃討作戦よりも、タリバンの影響力をそぐ上で前進があったとの結論を出した。
 オバマ演説が発表したのはまさに、3万人のサージを上回る規模の3万3000人の兵力を来年夏までに撤退させる計画である。ペトレアス司令官は、このNIEとりまとめ作業では、一時の経過的状況下での情勢判断は現状を反映していないと反論したという。
 そのペトレアス司令官が今度、パネッタ長官の後任のCIA長官に指名された。これまでCIAの意見とぶつかることが多かったペトレアス司令官がCIA長官としてうまくやっていけるのかどうか、ワシントンでは注目されているという。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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