農産物「廃棄」対策はうまくいくか

執筆者:山田剛 2011年10月19日
タグ: 中国 インド
エリア: アジア

 インドの経済成長を左右するのは、IT(情報技術)でも自動車産業でもなく、6億人以上が生活の糧を得ている農業セクターの動向だ。総人口12.1億人の68%、実に8億人強が農村部に暮らしているため、GDP比で13.6%(11年4-6月期)しかない農業が国家経済にダイレクトに影響する。歴史的に見ても、農業部門の成長率が落ち込むと、製造業やサービス業ががんばってもなかなかリカバーできない。逆に言えば、農業セクターに対する効果的なテコ入れが成功すれば、経済を堅固に下支えすることができるのである。
 インド政府はこのほど、2012年度からスタートする第12次5カ年計画において、適切な保管・加工や輸送ができないために腐敗し廃棄される農産物を減らすため、現行の第11次計画の約4倍に当たる1500億ルピー(約2400億円)の対策費を盛り込む方針を明らかにした。現状では整備が大きく遅れた選果場や保冷倉庫、カントリーエレベーターなどの産地インフラの改善・拡充を図る考えだ。
 インドでは、こうした農業関連インフラの不備や農道の未整備などによって、収穫された農産物の30%前後が損傷・腐敗し廃棄されているといわれている。印ポストハーベスト工業技術中央研究所(CIPHET)の調査によると2010年には、農産物の廃棄による損失が4400億ルピー(約6900億円)にも達した。これは農業セクターのGDPの実に7%近くに相当する。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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