防衛力の存在は、「国の平和と繁栄の礎」と言われてきた。平和があってこそ繁栄もある、という論理だ。だが平和は、繁栄の必要条件であっても十分条件ではない。 今日、核による相互確証破壊よりも、国債の投げ売りによる経済の相互確証破壊が囁かれるようになった。EUはなりふり構わずギリシャを救済し、中国は人民元切り上げを頑なに拒否、米国はドル安を放置してTPPで起死回生を狙っている。世界は、かつて第2次世界大戦を引き起こしたブロック経済化の様相すら呈している。 世界の安定は、核と為替の均衡の上に成り立っていた。いま、核が恐怖の均衡から縮小均衡に向かう一方、為替の暴走を止める手立てはない。それは、投機マネーというグローバルな「非国家主体」が、核に代わって世界共通の脅威となったことを意味している。

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