流通市場を閉ざす「壁」となった風評――被災地の苦闘は続く

執筆者:寺島英弥 2014年6月24日
タグ: 中国 韓国 日本
エリア: アジア

 被災地の市場回復を妨げ、地元経済の空洞化、ひいては人口流出につながる問題の根は、今なお福島第1原発で汚染水がたまり、漏えいや流出が相次ぐ現状と、対策を講じられずにいる国への不信だ。より厚く重く、固定化する「風評」は、生産者の苦悩、消費者側の不安を終わりなく隔てる壁になりかねず、克服の道の模索こそ福島、宮城、岩手の枠を超えて取り組むべき震災4年目の最も厳しい課題――。被災地の声は一致している。

 

 4月2日の「フォーサイト」に掲載された拙稿「『風評』の固定化:『東北被災地』に立ちはだかる大きな壁」で、筆者は福島県南相馬市の農家集落が自力復興を懸けて栽培を始めたネギや、宮城県石巻市北上町十三浜の漁業者が復活させた養殖ワカメの価格低迷を紹介し、上記のような問題提起をさせてもらった。「風評の固定化」は東北の被災地の浜でさらに広がり、流通を含めて構造的な「壁」となっていた。宮城県塩釜市の水産加工業の現状を中心に報告したい。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
寺島英弥(てらしまひでや) ローカルジャーナリスト、尚絅学院大客員教授。1957年福島県相馬市生れ。早稲田大学法学部卒。『河北新報』で「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)などの連載に携わり、東日本大震災、福島第1原発事故を取材。フルブライト奨学生として米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』『福島第1原発事故7年 避難指示解除後を生きる』(同)、『二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて――青年将校・対馬勝雄と妹たま 単行本 – 2021/10/12』(ヘウレーカ)、『東日本大震災 遺族たちの終わらぬ旅 亡きわが子よ 悲傷もまた愛』(荒蝦夷)、3.11以降、被災地で「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を書き続けた。ホームページ「人と人をつなぐラボ」http://terashimahideya.com/
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