再建の道を閉ざす三洋の「事業延命」

執筆者: 2007年5月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

行動の遅れは有望な電池事業などまでダメにしかねない。にもかかわらず、社員も金融機関も身動きが取れず――。「金融機関や投資家から信任が得られなかった」。三月二十八日、三洋電機の創業者(井植歳男)の孫にあたる井植敏雅は、四月一日付で社長を辞任することを表明した。会見では「以降は取締役として残る」とも語ったが、それも六月末の株主総会まで。その後は特別顧問に退く。創業から六十年。井植家による経営は終わりを告げた。 四十分にわたる会見での敏雅の主張は二点に要約できる。一つは「自分なりに三洋の構造改革を実行してきた。その方法は正しかったはずなのに、メーンバンク(三井住友銀行)と大株主(米ゴールドマン・サックス証券と大和証券SMBC)から理解が得られなかった」というもの。もう一つは「マスコミに内部情報が漏れすぎた。それが(再建を果たせない段階での)辞任の一因となった」。結局、自らの経営責任については触れず仕舞い。「敏雅君らしいな」。会見を聞いていた三洋OBは皮肉を込めてそう呟いた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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