現地ルポ「来日インドネシア人介護士」の声

執筆者:出井康博 2008年8月号
エリア: アジア

[ジャカルタ発]六月のある早朝、ワユディン君(二六)はインドネシアの首都ジャカルタ近郊のパーキングエリアで、イスラム教徒へのお祈りの呼びかけ「アザーン」を聞いていた。「アッラーフ、アクバル」(神は偉大なり) 遠くのモスク(イスラム寺院)から拡声器を通じ、厳かな声が繰り返し流れている。時刻は午前四時半を回っているが、辺りはまだ真っ暗だ。気温は二十度を少し超える程度。しかし、熱帯特有の湿気のせいで、じっとしていても汗が滲むほどだ。 ワユディン君は五十人以上の仲間と一緒にパーキングエリアのトイレへと向かった。お祈りの前には手足を清める必要があるが、ここにはトイレ以外に水場はない。独特の甘い香りを放つインドネシアのタバコ「ガラム」と尿の臭いが混じり合うトイレへ入ると、ワユディン君は汗ばんだシャツを脱ぎ、頭から水をかぶり、そして祈った。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
出井康博 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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