金融危機の「未成熟大国」への影響を注視せよ

執筆者:田中明彦 2008年11月号
エリア: アジア

 現在の金融危機で何を一番恐れるべきであろうか。恐れることは多々ある。さらなる金融機関の破綻は恐ろしい。取り付け騒ぎも恐ろしい。株や為替、その他商品市場の乱高下も不安をかき立てる。さらに、実体経済が不況に転げ落ちるのも防がなければならない。 このような経済におけるさらなる事態の悪化を恐れるのは当然である。しかし、一九二九年の大恐慌以後の歴史を振り返ってみれば、最終的に真に恐るべきは、国際政治への影響である。国際政治の枠組みが崩壊し、平和と安定の基礎が崩れたとき、二十世紀は人と人が殺し合う世界を生み出してしまった。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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