「ヤマモトさん、今は夏ですねえ」 車椅子の老女の脇にしゃがんで、白地に緑のアクセントの入った制服を着たインドネシア人介護士、ワヒューディン君(二七)が、のんびりとした調子で話しかけている。「そうだね……」「ヤマモトさん、夏祭りには行きましたか」「若いころには行ったよ」「ワカイコロ?」「そう、若い頃はね……」「今でも、若いですよ」 そのひとことで、老女の顔がくしゃくしゃになった。「なあに! もう、しわくちゃだよ!」 老女が弾けるように笑った。立派にコミュニケーションが成立しているばかりか、ユーモアも通じている。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン
