「分裂選挙」にかかる小沢氏の「9月復権」

執筆者:野々山英一 2010年6月11日
カテゴリ: 政治
エリア: アジア

 「よく頑張ってくれた。これをテコに9月を頑張ろう」
 6月7日、民主党幹事長を辞めて無役になった小沢一郎氏は、赤坂の個人事務所で側近の三井辨雄(わきお)党国対委員長代理に語りかけた。この日は両院議員総会で、菅直人新代表のもと、枝野幸男幹事長ら「脱小沢」執行部が承認された日。小沢氏にとっては屈辱的な一日だった。総会を「所用」で欠席した小沢氏は、9月反攻を予告した。
 「6月政局」は完敗した小沢氏。どんな反転攻勢シナリオを描くのか。それは、党代表選のシステムが関係している。  菅首相の党代表としての任期は、前代表だった鳩山由紀夫氏の残任期間で9月末。それまでに代表選が行なわれるが、その時は、党所属国会議員だけでなく、党員、サポーター(会費を払い名前を登録した人)も参加できる制度で行なわれる。
 逆風にさらされる小沢氏だが、この制度ならまだ威光を発揮できる。幹事長として全国行脚してきた小沢氏は、自分の息のかかった党員、サポーターを圧倒的に多く集めている。「そこで原口一博総務相や海江田万里衆院議員ら知名度の高い候補を擁立すれば菅氏に勝てる」(側近)というのが小沢氏側の読みだ。小沢氏自身が岩手県連の会合に寄せたメッセージでの「(参院選の後)自分自身が先頭に立って頑張る」という発言を額面通りに受け取れば、自身が代表選に打って出る可能性もある。
 だが、選んだばかりの首相を3カ月少々で替えるには「大義」がいる。もし民主党が単独過半数となる60議席以上を確保すれば「脱小沢」路線が国民に支持されたことになる。9月の代表選は菅氏が無投票再選される流れになり、小沢氏は手も足も出ない。
 従って小沢氏は、菅氏が参院選で傷つき、退陣論が出る展開をイメージする。もちろん自身の系列候補は応援するが、党全体としては「敗北」するのが理想だ。
 それでは民主党は、参院選で何議席獲得できるのか。支持率が上がったとはいえ、昨年の衆院選の時のような熱狂はない。現状では50議席前後というのが一般的な見方。本来の目標の60議席にはまだ遠い。

カテゴリ: 政治
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