オバマはレーガンにあやかれるか

執筆者:足立正彦 2010年9月3日
エリア: 北米

  2008年民主党大統領候補選出プロセスが始まった直後の08年1月、オバマは、「リチャード・ニクソンやビル・クリントンができなかった方法で、ロナルド・レーガンは米国の『軌道(“trajectory”)』を変えた。当時、米国はそれを受け入れることができたため、レーガンは根本的に異なる方向に米国民を導いた」と発言し、「民主党の大統領候補指名獲得を目指すオバマが共和党大統領を評価するとは何事か」と党内からの批判に晒されたことがあった。
   レーガンとオバマは、優れたコミュニケーション能力を持っている点や、経済的に厳しい状況下で政権を発足させた点でも共通している。レーガン政権当時はスタグフレーションに悩まされ、1982年から83年には米国の失業率は二桁に達し、82年中間選挙で共和党は下院で26議席も減らし、民主党に敗北を喫した。だがレーガンは、規制緩和・減税等を柱とするレーガノミックスを引き続き推進する必要性を米国民に繰り返し訴え、その後、米経済も改善する中、84年大統領選挙では圧勝して再選を果たした。
   オバマはホワイトハウスが『経済回復の夏(“Summer of Recovery”) 』と名付けた遊説キャンペーンを全米各地で行って、自らの積極的財政支出の正当性を有権者に対し訴えている。だが、米経済が引き続き低迷し、雇用情勢も改善しない中、オバマの経済政策への有権者の信頼も大きく揺らいでいる。「変革」を掲げ、レーガンのように米国を新たな道へと大胆に導こうとしたオバマに、今大きな壁が立ちはだかっている。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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